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棚に戻すまでの数秒

棚に戻すまでの数秒

スーパーの棚の前で、手に取ったものをそっと戻すことがよくあります。

おいしそうなパッケージ、子どもが好きそうな味、値段も手頃。かごに入れかけて、ふと裏返して原材料を見て、また棚に戻す。その数秒が、実はいちばん長く感じる時間だったりします。

私は料理がそんなに得意ではありません。手の込んだ常備菜を作り置きすることもないし、凝ったレシピに挑戦することもほとんどありません。だからこそ、材料と調味料だけは選びたいと思うようになりました。手間をかけられない分、選ぶことでどうにかしたい、というのが正直なところです。

とはいえ、毎回迷いなく戻せるわけではありません。疲れている日は、そのままかごに入れてしまうこともあります。子どもが「これがいい」と手に取ったものを、そのまま買うこともあります。それでいいと思っています。毎回完璧に選べる人なんて、たぶんいません。

以前、自然食品のお店で働いていたころ、お客さんが商品棚の前で長い時間立ち止まっているのをよく見かけました。あのときは「悩んでいるんだな」くらいにしか思っていませんでしたが、今は自分がその立場になって、あの数秒の重さが分かるようになった気がします。

原材料表示の「/」より後ろが添加物だと知ってから、裏を見る癖がつきました。知っているからといって、毎回きっぱり判断できるわけではありません。迷ったまま戻すことも、迷ったまま買うこともあります。それでも、見る習慣があるかないかは、案外大きな違いだと思っています。

棚に戻すという行為は、ちょっと面倒で、ちょっと後ろめたくもあります。レジに並んでいる人を待たせているような気がしたり、店員さんの目が気になったり。それでも、戻す数秒があることを、自分では悪くないと思うようにしています。迷った、ということ自体が、何かを選ぼうとした証拠だからです。

お店を開いたら、手に取って、裏を見て、そのままかごに入れられる。棚に戻さなくていい商品を並べたいと思っています。今はまだ、私自身がスーパーの棚の前で迷う側の一人です。


こけもも店主 石本由貴

この記事を書いた人

石本 由貴natural select shop こけもも 店主

福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。

こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。

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