暮らしのこと
よその家の食卓が、まぶしく見える日
よその家の夕ごはんの写真は、どうしてあんなにきれいなんだろう、と思うことがあります。小鉢がいくつも並んでいて、緑や赤の彩りがあって、器もそろっている。写真だけの話ではありません。子どもの友だちのお母さんと立ち話をしていて、昨日の晩ごはんの話になったときに、品数の多さにびっくりすることもあります。
それに比べてうちの食卓は、おかずが一品と、みそ汁と、ごはん。全体的に茶色い日も多いです。野菜はみそ汁に入っているぶんくらい。以前は、そういう食卓を並べるたびに、少しうしろめたい気持ちがありました。ちゃんとやっている人がこんなにいるのに、うちはこれでいいのだろうか、と。
正直に言うと、私は料理がそんなに得意ではありません。手の込んだものは作れないし、作り置きも続いたことがありません。だから、品数でよその家と張り合おうとすると、どこかで必ず息切れします。何日かがんばって、そのあと反動でもっと簡単な食事が続く。その繰り返しでした。
あるとき、比べる相手を変えてみようと思いました。よその家ではなく、去年の自分と比べる。そうすると、去年よりみそ汁を作る日が増えたな、とか、去年はよく分からずに選んでいた醤油を、今は理由があって選べるようになったな、と思えることがあって、少し気持ちが軽くなりました。
いまのわが家のやり方は、品数を増やすのはあきらめて、その代わり毎日必ず使うものだけ気をつける、というものです。ごはんに炊くお米、みそ汁のみそ、かける醤油。この三つがちゃんとしたものだと、おかずが一品でも、なんとなく満足できる食卓になる気がしています。逆に、そこが間に合わせだと、品数を増やしてもどこか物足りない。少なくとも私はそう感じます。
以前、自然食品のお店で働いていたころ、買い物に来る方が調味料の棚の前で長いあいだ迷っているのをよく見ました。当時は、そこまで悩むものかなと思っていました。今は自分が同じことをしています。おかずの豪華さは日によってばらつくけれど、土台になるものを選んでおけば、その日ぐらいはこれでよかったと思える。そういう安心のために、棚の前で少し時間をかけています。
よその家の食卓は、これからもきっとまぶしく見えます。写真や立ち話で比べてしまう気持ちも、たぶんなくなりません。それでも、うちの茶色い食卓が、家族にとってふつうの夜になっているなら、それでじゅうぶんなのだと、最近は思えるようになりました。
うちが自然食品のお店をやりたいと思っているのも、こういう「品数じゃなくて、選ぶことでなんとかする」というやり方を、同じように迷っている人と分け合えたらと思うからです。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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