柳川のこと
足元に、100年の牛乳がありました ― 柳川牛乳のこと
柳川で牧場が始まった理由を知って、いい話だなと思いました。
この界隈にはお寺が多く、牛のエサになる草が豊富にあったから。
それが柳川牛乳さんのはじまりだそうです。牧場を開かれたのが明治35年(1902年)。そこで搾った乳を、牛乳として売り始めたのが大正9年(1920年)。それから100年以上、この街で牛乳をつくり続けておられます。
今つくられているのは、2種類だけだそうです。瓶入りの「柳川均質牛乳」と、「柳川コーヒー」。紙のキャップにビニールのフードという、あの懐かしい姿のまま。
そして殺菌のしかたが、少し変わっています。75℃で15分間。
いま日本で売られている牛乳の多くは、120℃以上の高い温度で数秒という方法でつくられています。そのほうが短時間で済み、日持ちもします。効率で考えれば、当然の選択です。
柳川牛乳さんは、低い温度で、長い時間をかける方法を続けておられます。手間はかかります。それでも、その方法を選び続けている。
先日、日本酒の記事で「足すのではなく、待つ」と書きました。乳酸を加えて2週間で仕上げるのではなく、蔵の菌が増えるのを4週間待つ。あの話と、どこか重なって見えました。効率ではないほうを選び続けている人たちが、ここにもいる。
つくられている量は、月におよそ4千本だそうです。販売のほとんどが配達で、あとは工場の直売と、近くの数店舗のみ。決して大きな商いではありません。
そして正直に書いておきたいことがあります。柳川牛乳さんは今、後継者を探しておられます。事業を引き継いでくれる人を、公に募集されている状態です。
100年以上続いてきたものが、続くかどうかの場所に立っている。そのことを知って、少し考え込んでしまいました。
私はつい先日、北海道の牧場がつくる生乳に憧れて記事を書いたばかりでした。手が届かないほど高いけれど、いつか置きたいと。
でも、足元に100年の牛乳がありました。
遠くのすばらしいものに憧れることと、近くにあるものを知ることは、どちらも大事なのだと思います。まずは自分の街のことを、もっと知りたい。そう思っています。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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