作り手のこと
ラベルに描かれているのは、菌でした ― 産土「香子」のこと
熊本県和水町の花の香酒造さんがつくる日本酒「産土(うぶすな)」。前回は「穂増」というお米の話を書きましたが、今回は「香子(かばしこ)」というお酒と、そのラベルについて書きたいと思います。
まずラベルのことから。産土のボトルは、とにかく美しいのです。細かな模様が一面に広がっていて、飲み終わったあとも捨てられずに置いてあります。
この模様が何なのか、調べてみて驚きました。描かれているのは、菌と微生物なのだそうです。
土を豊かにする菌。米のでんぷんを糖に変える麹カビ。その糖を酒に変える酵母。どれも目には見えませんが、この生きものたちがいなければ、酒は一滴もできません。その見えない存在たちを、小さな宇宙のように描いている。「産土」という哲学がそのままラベルになっているのだと知って、見え方がすっかり変わりました。
美しいから美しいのではなく、意味があるから美しい。そういうデザインだったのだと思います。
そして中身のお酒のこと。「香子」は、肥後香子(ひごかばしこ)という熊本の在来品種でつくられています。江戸時代の享保のころには、九州一円で育てられていた上等な米だったそうです。
この米の特徴は、名前のとおり香りです。蒸すと、その香りが隣近所にまで届いたと言われるほど強い。あまりに香りが高いので、昔は普通のお米に5%から10%ほど混ぜて炊き、特別なお客様をもてなすときに出したのだとか。それだけ貴重で、特別な米だったということです。
その香子を、3年の歳月をかけて復活させたのだそうです。そして今は、混ぜものではなく、その米だけで酒を仕込んでいる。かつて数%しか使えなかった米で、まるごと一本つくる。そう思うと、一杯の重みが変わってきます。
我が家では、親族が集まったときに何本か並べて飲み比べるのが恒例になっています。同じ蔵、同じつくり方でも、米が違うと本当に味が違う。次に集まるときが、また楽しみになりました。
※20歳未満の方の飲酒は法律で禁止されています。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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