暮らしのこと
「こけもも」という名前に、深い理由はありません
お店の名前について聞かれることがあります。「こけももって、どういう意味ですか」と。
そのたびに、少しだけ申し訳ない気持ちになります。
正直に言います。深い理由はありません。かわいかったからです。
それだけです。
由来を聞かれるということは、たぶん何かしらの物語を期待されているのだと思います。柳川の何かにちなんでいるとか、祖母の名前をもらったとか、そういう話です。実際、そういう由来を持つお店をいくつも知っています。聞くたびに、いいなと思います。
私にはそれがありません。響きがかわいくて、口に出したときの感じがよくて、それで決めました。
一度、もっとちゃんとした理由を用意したほうがいいのだろうか、と考えたことがあります。後から意味を足すことは、たぶんできます。それらしい言葉を並べれば、形にはなるでしょう。
でも、それは嘘になります。
自分の店で、嘘をつくところから始めたくないと思いました。
名前を決めたあとになって、コケモモという植物のことを調べました。ツツジの仲間で、背の低い常緑の木です。高い山や寒い地方に育つそうで、柳川の気候では自生しません。うちの店の名前なのに、うちの土地では育たない植物でした。
小さな赤い実をつけます。北欧ではジャムにして、肉料理に添えるのだそうです。
派手な花が咲くわけでもなく、木が大きくなるわけでもありません。厳しい場所で、地面に近いところに、静かに生えている植物です。
自分の店と重ねるつもりはありませんでした。ただ、そういう植物だと知って、悪くない名前を選んだな、とは思いました。
意味は、後からついてくるのだと思っています。
私は料理が得意ではありません。特別な知識があるわけでもありません。それでも店を始めようと思えたのは、素材と調味料を選ぶことなら続けられそうだ、と感じたからです。
その程度の始まりです。名前の決め方も、たぶん同じくらいの重さでした。
それでも、口に出すたびに少しうれしくなる名前を選べたことは、思っていたよりずっと大事だったのかもしれません。これから何年も、毎日呼ぶことになる名前ですから。
「こけももって、どういう意味ですか」
これからも聞かれると思います。そのときは、正直に答えます。かわいかったからです、と。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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