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作り手のこと

日本でただ一つの「生の乳」― 想いやり生乳のこと

日本でただ一つの「生の乳」― 想いやり生乳のこと

正直なところから書きます。私はいま、この牛乳を自分では買えていません。高いのです。

北海道河西郡中札内村にある「想いやりファーム」がつくる想いやり生乳。日本でただ一つ、殺菌をせずに販売することが許可されている生乳です。通常、生乳をそのまま売ることは「乳等省令」という法律で認められていません。この牧場だけが、その例外として許可を受けています。

はじめて飲んだのは、以前、自然食品のお店で働いていたころでした。もう8年から10年ほど前になります。店に置いてあるとはいえ、定価ではとても手が出ませんでした。だから私は、消費期限が近づいて割引になったときに買っていました。働いている店の商品なのに、そうやってしか買えなかったのです。

それでも、飲むたびにおどろきました。これは牛乳とは別の飲みものだ、と思いました。うまく言えないのですが、牧草の香りがするのです。しかも季節によって風味が変わる。不思議でしたが、その変化がまったく嫌ではありませんでした。

あとから理由を知って、納得しました。この牧場では28ヘクタールの土地で牛を昼夜放牧し、エサの95%が無農薬・無肥料の牧草だそうです。牛が季節ごとの草を食べているから、乳の味も季節で変わる。 均一でないことは、この乳にとっては欠点ではなく、むしろ自然な姿なのだと思いました。

そして、なぜ殺菌しなくてよいのか。それは「殺菌しない」のではなく、牛が健康なので殺菌する必要がない、という考え方に基づいています。牛の幸せを第一に置いた飼い方をした結果として、生のまま飲める乳になる。順番が逆ではないところに、私はいちばん惹かれました。

価格は当時から高いものでしたが、その後の値上げで、正直わが家の家計では手が出せなくなりました。それでも、あれだけの手のかけ方を知ってしまうと、これは当然の価格なのだとも思います。安くつくれるものを高く売っているのではなく、この育て方でしかつくれないものが、その値段になっている。

いつか自分の店をひらけたら、置きたいもののひとつです。今はまだ、目標のままですが。


こけもも店主 石本由貴

この記事を書いた人

石本 由貴natural select shop こけもも 店主

福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。

こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。

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