暮らしのこと
開店前なのに、お客さんの顔を思い浮かべています
棚も、レジも、まだどこにもありません。それなのに最近、頭の中では「どんな人がこの店に来てくれるだろう」と、ずっと考えています。
想像するのはたいてい、特別な誰かではありません。夕方になってもまだ晩ごはんが決まっていなくて、正直そんなに料理が得意でもなくて、それでも子どもに食べさせるものだけはちゃんと選びたいと思っている人。書いていて気づきましたが、それはほとんど自分自身のことです。
こういう店をやろうと思ったとき、最初に浮かんだのは「意識の高い、こだわりのお店」ではありませんでした。むしろその逆で、こだわりが強すぎる場所には、自分自身が入りにくさを感じてきたからです。棚に並ぶ言葉が難しかったり、店員さんが詳しすぎたりすると、素人質問をするのが気まずくて、結局何も聞けずに帰ったことが何度もあります。
だから自分の店では、そうならないようにしたいと思っています。「これで合っているのか分からないけど、とりあえず聞いてみよう」と、気軽に立ち寄ってもらえる場所です。詳しい人が上から教える場所ではなく、迷っている人の隣に立って、一緒に棚を眺めるくらいの距離感がいいと思っています。
以前、歯科衛生士として人と向き合う仕事をしていたことがあります。専門的な話をするときほど、身構えさせない伝え方が大事だと感じていました。自然食品も同じで、正しさを押しつけるより、「うちはこうしています」くらいの温度で話すほうが、相手も自分の生活に置き換えて聞いてくれる気がします。
もちろん、これは全部いまの想像でしかありません。実際に店を開けてみたら、思い描いていたのとはまったく違う人が来るかもしれませんし、想像していた会話が一度も起きないかもしれません。それでもいいと思っています。
誰も来ない店を思い浮かべながら準備するのは、少し心細い作業です。でも「こんな人に来てほしい」という顔がひとつあるだけで、棚の並べ方も、値段の付け方も、置く商品の選び方も、少しずつ輪郭がはっきりしてくる気がしています。
まだ何も始まっていませんが、その人の顔を思い浮かべながら、今日もひとつずつ準備を進めています。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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