暮らしのこと
見えないものに支えられて ― 盆と正月の墓参りのこと
わが家には、盆と正月に必ずすることがあります。墓参りです。
こういうことを店のホームページに書くべきかどうか、正直かなり迷いました。信仰に近い話は、人によって受け取り方がまるで違うからです。それでも書くことにしたのは、これがうちの暮らしの中心にあることだからです。
先に断っておくと、これは「こうすべきだ」という話ではまったくありません。わが家はこうしています、という記録です。
### 先祖のため、というより
正直に書きます。私が墓参りに行くのは、先祖のためというより、自分たちのためなのだと思います。
石の前に立って手を合わせると、不思議と心が落ち着きます。ざわざわしていたものが、いったん静かになる。理屈ではないのですが、そういう感覚があります。
そしてもうひとつ。私は毎回、その年に考えていることを心のなかで報告しています。
今年でいえば、店をひらこうとしていることです。
まだ何も決まっていません。改装も、資金の目処も、これからです。それでも「やろうと思っています」と伝えてくる。決意表明のようなものです。
誰かに聞いてもらったわけでもないのに、帰り道には少しだけ腹が決まっている。毎回そうです。
### 自分がどこから来たのか
墓参りにはもうひとつ、自分のルーツを確かめるという意味があります。
自分がどこから来たのか。誰がいて、いまの自分がいるのか。
普段の生活では、まず考えません。仕事があって、子どもの支度があって、一日が終わっていく。けれど年に何度か、そこに立ち返る時間があるのは、悪くないことだと思っています。
### 子どもたちに伝えたいこと
子どもたちにも、一緒に来てもらっています。
伝えたいことは、うまく言葉になりません。あえて書くなら、こんなことです。
目に見えないものを感じる力。世の中には、数字や理屈で説明できないものがある。それを頭から否定しない人であってほしい。
自分は誰かに支えられているということ。いま自分がここにいるのは、自分の力だけではない。
誰かのために生きるということ。そして、家族は大切だということ。
こんなことを子どもに説明しても、たぶん伝わりません。だから何も言わず、ただ一緒に手を合わせています。それでいいと思っています。
### これが正しいのかは、分かりません
ここは正直に書いておきたいところです。
これが正しいのかは、分かりません。
いまはお墓じまいをされる方も多いですし、遠方でどうしても行けない方、事情があってお参りをやめた方もいらっしゃいます。それぞれに理由があり、どれも尊重されるべきものだと思います。
続けることだけが正解ではないはずです。形は、それぞれでいい。
ただ、わが家は続けていきたい。それだけの話です。
### 産土という言葉
以前、熊本の日本酒「産土(うぶすな)」について書きました。生まれた土地、その土地の神さま、ものを産み出す母なるもの――そんな意味の古い言葉です。
その意味を知ったとき、墓参りでやっていることと、同じことを言っているなと思いました。
自分がどこから来たのかを確かめて、その土地に手を合わせる。米も、水も、菌も、その土地のものでつくる。向いている方向が同じなのです。
### 見えないものに支えられている
そして、こう考えると、私が扱いたいと思っているものにも、つながっていきます。
味噌も、醤油も、お酢も、日本酒も。目に見えない菌の働きでできています。
蔵に棲みついた菌が、その蔵の味をつくる。人がやれるのは、環境を整えて、待つことだけ。見えないものに支えられて、ものができる。
墓の前で手を合わせるときの感覚と、そう遠くない気がしています。
うまく説明できないのですが、私が惹かれているものには、どうやら共通するものがあるようです。
そういう店をつくりたいと思っています。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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