作り手のこと
「素材を越える加工方法はない」― かつお節に教わったこと
かつお節は「だしを取るもの」だと、ずっと思っていました。スーパーの棚にある袋を、特に選ぶこともなく手に取って、味噌汁の下ごしらえに使う。それ以上のことを考えたことがありませんでした。
考えが変わったのは、以前、自然食品のお店で働いていたときです。店で扱っていた「タイコウ」のかつお節を、自分でも買って使ってみました。何気なく、ひとつまみそのまま口に入れて――甘い、と感じたのです。だしを取る前の段階で、すでに食べものとして完成している。しばらく袋を見つめてしまったのを覚えています。
タイコウは、東京・日本橋小舟町にある鰹節の問屋です。江戸時代から続く「加賀屋・阿部長兵衛商店」を起源に持ち、鹿児島県近海で一本釣りされた鰹のかつお節を扱っています。
その後、勤めていたお店で「出汁とり教室」を開くことになりました。そして、タイコウの社長さんご本人が来てくださり、直接レクチャーしていただけたのです。削り方、火加減、だしの取り方。プロの手つきを間近で見せていただいた時間は、今もよく覚えています。
タイコウが掲げているのは、こんな考え方です。
「素材を越える加工方法はない」
どんなに丁寧に加工しても、もとの素材以上のものにはならない。だからこそ、素材そのものを選ぶ。この言葉を知ったとき、あの日教わったことの意味が、すとんと腑に落ちた気がしました。
料理が得意ではない私にとって、これは救いでもありました。技術で補えないのなら、選ぶところから変えればいい。腕がなくても、いいものを選べばちゃんとおいしくなる。今の私の考え方の、ひとつの土台になっています。
いつか自分の店をひらけたら、またあの方に来ていただきたい。そんな目標を持ちながら、準備を進めています。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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