作り手のこと
「1%」の醤油を探して ― 奈良・片上醤油のこと
先日、木桶で仕込まれた醤油や味噌が、いまや全体の1%以下だという話を書きました。醸造用の大きな木桶をつくれる桶屋さんが、全国にもう1軒しか残っていないという話も。
では、その「1%」とはどんな醤油なのだろう。そう思って調べていて出会ったのが、奈良県御所市の片上醤油さんでした。
葛城山のふもとにある、昭和6年創業の小さな蔵です。ここでは杉の木桶を使い、天然醸造で醤油をつくっています。
天然醸造というのは、発酵を人の手で急がせない方法のことです。加熱もせず、酵母を足して発酵を早めることもしない。蔵と木桶に常在している菌の働きにまかせて、大豆と小麦をゆっくり発酵させる。そうして1年以上寝かせて、ようやく醤油になります。
片上醤油さんの説明に、こんな一節がありました。
その蔵と、その木桶にしか出せない深い味わい。
これを読んだとき、既視感がありました。
日本酒の「産土」も、蔵に棲む菌と木桶で酒をつくっていました。隣町・大川の庄分酢さんも、300年続く蔵に住み着いた「蔵付き菌」がお酢をつくると話しておられました。
つくっているものは、酒と酢と醤油でまったく違います。それなのに、行き着いている考え方が同じでした。菌はその場所に棲んでいて、だからその場所の味になる。
そう考えると、私が好きだと思ってきたものが、どうも全部つながっているような気がしてきます。醤油、お酢、日本酒、味噌、キムチ、かつお節。どれも発酵です。
自分では「なんとなく好きで選んできた」つもりでした。でも実際には、ひとつの筋が通っていたのかもしれません。
片上醤油さんは、原料の大豆もほとんどが奈良県産で、しかも一般的な量より多く使っているそうです。こいくち、うすくちのほか、たまり醤油や青大豆の醤油もあるとのこと。要予約で蔵の見学もできるようです。
いつか、こういう醤油を店に置きたいと思っています。
この記事を書いた人
石本 由貴natural select shop こけもも 店主
福岡県柳川市で、自然食品店「こけもも」の開業を準備しています。
元・歯科衛生士。自然食品のお店で働いた経験から、食と体のことを考えるようになりました。
小学生の子ども2人を育てながら、料理が得意ではない自分でも続けられる「選び方」を探しています。
こけももは、福岡県柳川市新外町の自然食品店です。オンラインショップでも商品をご覧いただけます。
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